国際戦略推進機構基盤教育部門
准教授 于 臣ウ シン
国境を越えた分析枠組みで、東アジア企業家の思想や活動の特徴を解明するとともに
古典の現代的読みについても考察を進めている。
企業家については、これまで一国モデルや個別企業家についての研究が主流であったが、本人は経済活動特有の特徴を配慮しつつ、経済人の活動が一国にとらわれることなく、グローバル化していくことを前提に再考を行っている。また経済人の経営理念に反映される東洋思想の性格を分析しつつ、現代人がどのように古典を読めばよいかについても研究を進めている。
研究分野 - 分野
人文学
研究分野 - 分科
哲学
研究分野 - 細目名
思想史

キーワード
日中両国の経営倫理 / 経済人の国家観 / 現代中国の社会思想 / 儒学の現代的意義

相談に応じられるテーマ
日中両国の社会・経済発展と東洋思想 / 歴史から見る企業と国家、社会とのあるべき関係 / 企業倫理と東洋思想 / 中国人との付き合い方

所属
国際戦略推進機構基盤教育部門

E-mail
yu-chen-rc@ynu.ac.jp

研究概要

一国の経済発展は企業家の活動と不可分の関係にある。これまで近代東アジアの企業家に関する研究は、近代東アジアの経済発展に果たした彼らの役割を十分に明らかにしていない。本研究は思想史、経営史、外交史、社会史、教育史の視座から学際的に企業家への再考を行うことで今後、企業発展のあるべき姿を探りたい。なお、企業倫理を考えるにあたり、生態学的問題や環境問題を同時に考慮しなければならない。とくに新型コロナウィルス感染症の発生はある意味では人類が自然との共生を実現できていないことを示している。これがきっかけで人間が自然を支配・征服するといった西洋の考え方が疑問視され、人間性を重視し、自然との融合を図ろうとする東洋思想は再評価されることになる。混迷を極める現代社会において、人々の心を落ち着かせる東洋古典の『論語』があらためて注目される。しかし、『論語』の解説書の種類が無数にあり、読者はどちらを選ぶべきか時々迷う。一方、儒教の発祥の地であり、儒学などの伝統文化を再興させる動向がみられた中国では『論語』解釈のあるべき姿について一時、論争まで起きている。本人は企業家を考察すると同時に、近現代中国の『論語』解釈を、日本と比較しながら調べ、中国の『論語』読みの特徴を明らかにするとともに、その中の問題点をまとめた上で、『論語』などの古典をいかに読むべきかについて考えている。

アドバンテージ

中国語、日本語、英語の文献やウェブサイトを調べることでトランスナショナルなアプローチで研究を進めることができます。

事例紹介

ア)企業家をふくめ、現代人の我々がどのように古典を読むべきかについて検討する。

イ)『論語』は国によって読み方が異なるかどうかを確認しながら、思想史の角度から現代日本と中国社会の特質を比較考察する。

主な所属学会

東アジア文化交渉学会 / 日中社会学会 / 渋沢研究会

主な論文

『「在商言商」からみる近代中国商人の組織化:上海総商会と虞洽卿の例を手掛かりに』「渋沢研究」34号 2022.3
『近代日中実業界からみる民間外交の一側面 - 南洋勧業会と近藤渡清実業団を中心に』 「北東アジア研究」 23号 2012.3
『梁啓超の国家論に関する一考察-国権,国民論を中心に』 「横浜国立大学教育人間科学部紀要Ⅱ(人文科学)」 12巻 2010.12
『近代日中両国の商業教育の特徴に関する一考察-福沢諭吉の教育構想における「公・私」観を中心に』「東アジア文化交渉研究」2号 2009.3
『「経世済民」からみる儒学と「啓蒙」との関係-西周と張張謇の例を通じて』 「北東アジア研究」 17号 2009.3

主な著書

「東アジアの近代と企業家―ダイナミックな経済発展のキーパーソン」(共著)明誠書林,2023.8
「Strands of Modernization: The Circulation of Technology and Business Practices in East Asia, 1850-1920」(共著)University of Toronto Press, 2021.11
「渋沢栄一と〈義利〉 思想―近代東アジアの実業と教育」(単著)ぺりかん社, 2008.3