超小型衛星の軌道選択の自由度を高めるために、プラズマやイオン液体を使った
超小型推進機(マイクロスラスタ)の研究開発を実験と数値解析の両面から行っている。
大学院理工学府 機械・材料・海洋系工学専攻
理工学部 機械・材料・海洋系学科
研究概要
宇宙開発のハードルを大幅に引き下げた超小型衛星・宇宙機。今や衛星開発は、一部の大企業や政府機関だけでなく、中小企業や大学でも可能な時代になっています。しかし、大部分の超小型衛星は推進機(スラスタ)を搭載しておらず、衛星自らが自由に軌道を選ぶことができません。当研究室では超小型衛星の自由度を高めるために、プラズマやイオン液体を使った超小型推進機(マイクロスラスタ)の研究開発を実験と数値解析の両面から行っています。
アドバンテージ
小さい領域におけるプラズマ診断は難しく、実験だけで全ての物理量を調べることはできません。当研究室では実験に加えてプラズマ中のイオンと電子の挙動を直接追跡する粒子計算モデルやプラズマを一つの流れとして扱う流体計算モデルを用いた数値解析による研究も行っています。微小な領域におけるプラズマの振る舞いを実験と計算と双方から研究することで最適な生成法を提案できます。さらに、超小型衛星用の推進機として注目が高まっているイオン液体を用いたエレクトロスプレー推進機に関して、微細加工技術を利用した素子作製およびイオンビーム診断・軌道解析による性能評価も対応できます。
事例紹介
(図)超小型高周波プラズマ源を利用したイオンスラスタに関して、内径1 cm、長さ1 cmの放電室における高周波によるプラズマ生成およびイオンビーム引き出し、また、それに対応したプラズマ粒子計算による解析を行っています。
(図)超小型マイクロ波励起プラズマ源を利用した電熱加速型スラスタに関して、内径1.5 mm、長さ10 mmの放電室におけるマイクロ波によるプラズマ生成およびマイクロノズルによるプラズマジェット生成、また、それに対応したプラズマ流体計算による解析を行っています。
(図)イオン液体を利用したエレクトロスプレー推進機に関して、微細加工技術による多数のエミッタアレイ電極の作製、イオンビーム診断、さらに、分子動力学シミュレーションや粒子計算によるビーム軌道解析を行っています。
主な所属学会
日本航空宇宙学会 / 米国航空宇宙学会 / 応用物理学会
主な論文
『Emission measurements and in-situ observation of ionic liquid electrospray thrusters with longitudinally grooved emitters』「Journal of Electric Propulsion, Vol. 2, p. 23 (28pp)」2023
『Fabrication of nano-capillary emitter arrays for ionic liquid electrospray thrusters』「Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 60, p. SCCF07 (6pp)」2021
『Electron loss mechanisms in a miniature microwave discharge water neutralizer』「Physics of Plasmas, Vol. 27, p. 063505 (8pp)」2020
主な特許
特許第6927493号「イオン源」
主な著書
「宇宙ビジネス参入の留意点と求められる新技術、新材料」・技術情報協会・2020(分担執筆)
主な研究機器・設備
高真空槽
ハイパワー・ソースメータ2657A
飛行時間型質量分析系
ハイスピード・マイクロスコープ