理工学部 機械・材料・海洋系学科
准教授 大野 直子オオノ ナオコ
開発・分析・強度試験・照射試験・シミュレーション解析までの全てを手掛けている。特に複数の高度な微細組織観察手法を組み合わせた材料分析を得意としている。
極限環境・過酷環境で必要とされる材料の研究を展開している。ナノ酸化物粒子は高温や原子炉炉心環境でも安定で、合金中に非常に緻密に分散して材料の強度を保つ役割を持ちち、現在は鉄クロムアルミ系のODS合金の様々な特性を明らかにすることに注力している。
研究分野 - 分野
工学
研究分野 - 分科
材料工学
研究分野 - 細目名
構造・機能材料

キーワード
原子力 / 核融合 / 耐熱材料 / 電子顕微鏡

相談に応じられるテーマ
透過型電子顕微鏡(TEM)によるナノ析出物の解析 / TEM内引張試験 / 微細組織解析に基づく加工熱処理手法の提案

所属
大学院工学研究院 システムの創生部門
理工学部 機械・材料・海洋系学科
理工学府 機械・材料・海洋系工学専攻

E-mail
oono-naoko-yh@ynu.ac.jp

研究概要

私の研究室では極限環境・過酷環境で必要とされる材料の研究を展開しています。原子炉炉心で使われる材料は、高温強度・耐酸化/腐食特性・中性子照射環境に対する耐性の全てを満たす必要があります。要求される性質を全て満たせる可能性がある夢の材料が酸化物分散強化(ODS)合金です。金属や合金の粉末と酸化物(イットリアなど)の粉末を混ぜ合わせて、硬いボールでかき回すことで衝撃を与えて機械的に捏ねると、本来相容れない金属と酸化物が原子レベルで捏ね合わさります(メカニカルアロイング:MA)。MAした合金&酸化物の粉末を高温で押し焼き固めると、合金の中に数nm~十数nmの微細なナノ酸化物粒子が形成されます。ナノ酸化物粒子は高温や原子炉炉心環境でも安定で、合金中に非常に緻密に分散して材料の強度を保つ役割を持ちます。現在は鉄クロムアルミ系のODS合金の様々な特性を明らかにすることに注力しています。

アドバンテージ

研究室内で、開発・分析・強度試験・照射試験・シミュレーション解析までの全てを手掛けています。特に複数の高度な微細組織観察手法(例えば透過型電子顕微鏡と3Dアトムプローブ、後方散乱電子回折、X線回折など)を組み合わせた材料分析を得意としています。観察した微細組織を強度やその他の物性と関連付け、理論と実験の狭間で得た知見を材料設計に反映するスタイルで研究を行っています。

事例紹介

原子炉過酷事故時の高温を想定した模擬熱処理とその後の微細組織観察によって高温時の微細組織変化の予測式を構築した上で、合金中の微細組織変化が強度(硬さ)に及ぼす影響を解析しました。材料の強度を担う酸化物粒子は酸化物の種類によって成長のしやすさが異なります。これまで通常運転時の性質が調査されてきましたが、事故時を想定した1200℃超の高温においては安定な酸化物が(一部)通常運転時と異なることを明らかにしました。(Growth of oxide particles in FeCrAl-oxide dispersion strengthened steels at high temperature, Journal of nuclear materials 493, pp. 180-188.)

主な所属学会

金属学会 / 原子力学会 / 鉄鋼協会

主な論文

『Development of Accident Tolerant FeCrAl-ODS Fuel Cladding for BWRs in Japan』・「Journal of nuclear materials」2021年
『Precipitation of various oxides in ODS ferritic steels』・「Journal of Materials Science」2019年
『Precipitation of Oxide Particles in Oxide Dispersion Strengthened (ODS) Ferritic Steels』「Materials Transactions」2018年

主な特許

特開2018-070897「鉄−クロム−アルミニウム系酸化物分散強化型鋼およびその製造方法」
特開2013-181213「酸化物分散強化型ニッケル基超合金」

主な著書

“Comprehensive Nuclear Materials: 2nd Edition”, (担当範囲: 3.06 Oxide Dispersion Strengthened Steels ), Elsevier, 2020年

主な研究機器・設備

真空ホットプレス(1400℃, 10kN),遊星型ボールミル,TEM内引張ホルダ