
いかにしてイノベーションを実現していくのかについて、
経営学的な視点から研究を行っている。
経営学部 経営学科
総合学術高等研究院
研究概要
私は、営利企業とは異なる主体(各種の専門家、研究者、ユーザー等)が、営利企業と協力しながら、いかにしてイノベーションを実現していくのかについて、経営学的な視点から研究を行っています。特に、医療・ヘルスケア産業を中心に下記三つの調査・研究を行っています。
(1)どのような医療従事者がなぜイノベーション活動に関与するのか。
この研究では、医療従事者が医療機器の創出活動に関わる背景や、関わることを促進・阻害する要因を理論と定量・定性データを基に検討しています。
(2)新しい技術を活用した新たな実践はどのように広がるのか。
新たな医療技術の登場によって、医療従事者や市民の行動がどのように変わっていくのかに関心を持っています。その一つとして、AED(自動体外式除細動器)を用いた一般市民による救命行為の普及について研究しています。
(3)当事者によるイノベーションの推進と責任あるイノベーション
最近は、医療に関わる当事者が課題解決を進める過程にも関心をもっています。認知症の方や心疾患を持つ方による課題解決活動等を題材とした調査を進めています。
アドバンテージ
(1)経営学×医療
一つの強みは、医療・ヘルスケア領域と経営学とを結びつけて研究をしている点にあります。私は、以前より医療機器の開発や製品化、普及過程を事例とした経営学研究を行ってきました。それらの過程を経営学的な視点から研究している研究者は、日本ではあまりいません。
また実務に根ざした課題に取り組んでいるとも一つの強みかもしれません。丹念なフィールド調査を行うことで、現場で生じていることを肌感覚で理解できるようにしています。そうした調査を通じて情報を把握することは、質の良い経営学的な議論につながるだけではなく、実務的な問題解決に結びつく知見を得ることにもつながると考えています。
(2)分野横断的な取り組み
理工系研究者等とも共同研究を行っています。最近は人々の転倒を予防・防止するという観点から、先端技術の社会導入について多方面から研究を行っています。このような異分野の方々との連携から新たな知見を導こうとしていることも一つの強みです。
事例紹介
近年、取り組んだ研究として医療従事者によるイノベーションへの関与について、その背景を探ったものがあります。医師を対象とした質問票調査を医療機関の協力の下に行いました。その成果を、イノベーションを推進しようとする医療機関内の諸部門にフィードバックするなど、研究成果が実践につながるような活用をしています。
主な所属学会
組織学会 / 日本経営学会 / European Group for Organizational Studies
主な論文
『専門家ユーザーによるイノベーションへの関与と障壁―医師を対象とした実証分析―』「日本経営学会誌」2024. 56 巻 p. 45-58
『医師による医療機器の創出活動への関与―質問票調査にもとづく分析―』「レギュラトリーサイエンス学会誌」2022.12 巻 2 号 p. 111-123
『ユーザーイノベーション研究の新たな展開』「日本経営学会誌」2014.34 巻 p. 26-36
主な著書
『新旧「棲み分け」を実現する製品展開 主要各社によるX線CTとMRIへの資源配分と製品展開』「日本企業研究のフロンティア⑥」(一橋大学日本企業研究センター編,第3章)2010.
主な地域活動(国内、特に神奈川県内)
横浜市立大学附属病院次世代臨床研究センター主催「臨床研究セミナー」2020年7月講師担当
公益財団法人横浜企業経営支援財団主催「医療機器開発支援セミナー」2018年12月講師担当
横浜青年会議所主催「ハマのリーダー育成塾:第2回 創造性を高めるためのマネジメント」2016年講師担当