いかにしてイノベーションを実現していくのかについて、
経営学的な視点から研究を行っている。
経営学部 経営学科
総合学術高等研究院
研究概要
私は、営利企業とは異なる主体(各種の専門家、研究者、ユーザー等)が、営利企業と協力しながら、いかにしてイノベーションを実現していくのかについて、経営学的な視点から研究を行っています。近年は、特に医療・ヘルスケア産業を中心に調査・研究を行っています。もう少し具体的にまとめると、主に以下のようなトピックがあります。
(1)どのような医療従事者がイノベーション活動に関与するのか。
この研究では、医療従事者が医療機器の創出活動に関わる背景や、関わることを促進・阻害する要因を理論と定量・定性データを基に検討しています。
(2)新しい技術を活用した新たな実践はどのように広がるのか。
医療従事者が依拠するルーティーン(日々の診断や治療のやり方)は、既存の医療技術を基に構築されています。そうしたルーティーンが、新たな医療技術の登場によって、どのように変化していき、結果として医療の革新が実現していくのかを解明しようとしています。
アドバンテージ
(1)実務に結びつく知見の導出
一つ目の強みは、現場の問題解決を大切にしている点です。丹念なフィールド調査を行うことで、現場で生じていることを肌感覚で理解できるようにしています。そうした調査を通じて情報を把握することは、質の良い経営学的な議論につながるだけではなく、実務的な問題解決に結びつく知見を得ることにもつながると考えています。
(2)「バウンダリー・スパナー・デザイン研究拠点」における活動
この研究拠点では、本学の理工系研究者と社会科学系研究者が協力しながら、特に、最近は人々の転倒を予防・防止するという観点から、先端技術の社会導入について多方面から研究を行っています。私の役割としては、当事者となるユーザーや市民と各種研究者による対話が、いかに効果的に行われうるのかについて、質問票調査やインタビュー対象を通じて研究しています。企業が人々の暮らしを大きく変えていくような新たな製品・サービスを社会に導入していく際には、その使い手となる当事者の視点が欠かせません。そうした視点を重視した製品・サービス開発について知見を蓄積している点にも強みがあります。
事例紹介
近年、取り組んだ研究として医療従事者によるイノベーションへの関与について、その背景を探ったものがあります。医師を対象とした質問票調査を医療機関の協力の下に行いました。その成果を、イノベーションを推進しようとする医療機関内の諸部門にフィードバックするなど、研究成果が実践につながるような活用をしています。
主な所属学会
組織学会 / 日本経営学会 / European Group for Organizational Studies
主な論文
『医師による医療機器の創出活動への関与:質問票調査にもとづく分析』「レギュラトリーサイエンス学会誌」2022.
『Professional User as Innovator: Organizational Problems in Collaborative Projects』「ISPIM Innovation Conference Proceedings」2016.
『ユーザーイノベーション研究の新たな展開』「日本経営学会誌」2014.
主な著書
『新旧「棲み分け」を実現する製品展開 主要各社によるX線CTとMRIへの資源配分と製品展開』「日本企業研究のフロンティア⑥」(一橋大学日本企業研究センター編,第3章)2010.
主な地域活動(国内、特に神奈川県内)
横浜市立大学附属病院次世代臨床研究センター主催「臨床研究セミナー」2020年7月講師担当
公益財団法人横浜企業経営支援財団主催「医療機器開発支援セミナー」2018年12月講師担当
横浜青年会議所主催「ハマのリーダー育成塾:第2回 創造性を高めるためのマネジメント」2016年講師担当