理工学部 化学・生命系学科
准教授 新田見 匡ニッタミ タダシ
複合微生物からなる生物システム(活性汚泥・常在細菌)を対象に、
機能の維持や向上を目指した研究を行っている。
活性汚泥バルキングの原因となる糸状性細菌をその形態と系統の両方で特定する技術を有し、その増殖を特異的に制御する方法を探索している。また、PTFE製の平膜を膜分離活性汚泥法に適用する研究を企業と共同で進め、同廃水処理膜は中国で実用化されている。
研究分野 - 分野
環境学
研究分野 - 分科
環境保全学
研究分野 - 細目名
環境技術・環境負荷低減

キーワード
複合微生物系 / 活性汚泥法 / 固液分離 / 糸状性細菌 / 口腔内細菌 / バクテリオファージ / バイオメタネーション

相談に応じられるテーマ
複合微生物系の菌叢解析と制御 / バイオリアクターによる基礎データの取得

所属
大学院工学研究院 機能の創生部門
大学院理工学府 化学・生命系理工学専攻
理工学部 化学・生命系学科

E-mail
nittami-tadashi-gs@ynu.ac.jp

研究概要

複合微生物からなる生物システムを対象に、機能の維持や向上を目指した研究を行っています。
【活性汚泥】複合微生物系の一例に下水処理を担う微生物群(活性汚泥)があります。下水処理施設では処理の最終工程において活性汚泥と処理水とを沈殿により分離します。しかし図1のような糸状性の細菌が過剰に増殖すると、活性汚泥の沈降性が悪化し、処理水とともに活性汚泥が自然環境に流出するトラブルが生じます。下水処理の性能を損なわずに活性汚泥の沈降性を向上するため、糸状性細菌の増殖を特異的に制御する方法を探索しています。
【常在細菌】人の常在細菌もまた複合微生物系の一例です。我々のグループでは、口腔の疾患を誘引する細菌を特異的に制御する方法について研究を進めています。

アドバンテージ

複合微生物系の微生物叢を解析する技術を有しています。また実験室規模のバイオリアクターの運転に実績があります。

事例紹介

膜により活性汚泥の固液分離を行う「膜分離活性汚泥法」という技術があります。日本バルカー工業株式会社と共同でPTFE製の平膜を膜分離活性汚泥法に適用する研究を行いました(図2)。同研究の成果をもとに、特許の出願(主な特許に記載)、および国際誌での論文発表(Nittami et al., 2014 J Membr Sci 463 183-189、他)を行っています。また同廃水処理膜は現在中国において実用化されています。

図1 FISH法により活性汚泥中のバルキング原因糸状性細菌を観察した蛍光顕微鏡画像
 図2 PTFE平膜を適用した膜分離活性汚泥法の反応槽

主な所属学会

日本水環境学会 / 日本生物工学会 / 化学工学会 / 日本癌学会

主な論文

『Exploring the operating factors controlling Kouleothrix (type 1851), the dominant filamentous bacterial population, in a full-scale A2O plant』「Scientific Reports」2020(活性汚泥のバルキングに関する国際共同研究論文)
『Bacteriophages in natural and artificial environments.』「Pathogens」2019(バクテリオファージに関する国際共同研究論文)
『Enrichment of PHA-accumulators for sustainable PHA production from crude glycerol』「Process Safety and Environmental Protection」2019(活性汚泥による生分解性プラスチック生産に関する国際共同研究論文)

主な特許

特願2013-125948 「疎水性PTFE膜,サポート材付き疎水性PTFE膜,処理液の製造方法,膜分離活性汚泥法における活性汚泥およびろ過膜の選定方法,膜分離活性汚泥法におけるファウリングの抑制方法,ならびに,被処理液の処理方法」
特願2003-148188 「窒素除去用水処理プラントの活性汚泥中の微生物」

主な著書

『バイオエネルギー再燃』「第5章 5 微生物燃料電池と嫌気性アンモニア酸化を組み合わせた次世代下水処理法の開発」 シーエムシー出版 2021

主な研究機器・設備

 「蛍光顕微鏡」BX51
「定量PCR装置」Thermal cycler TP800
 「全有機炭素計」TOC-L