大学院環境情報学府 人工環境専攻
理工学部 機械・材料・海洋系学科 機械工学教育プログラム
研究概要
一般に固体の摩擦には、静摩擦と動摩擦が存在すると言われています。静摩擦から動摩擦への遷移は、微小な機械部品から巨大な大陸プレートに至るまで、様々なスケールでの間欠的な運動(スティックスリップ)を生み出します。しかし、純然たる力学の視点でこれを上手に眺めると、二種類の摩擦の存在は必ずしも必要ではありません(Nakano & Popov 2020「動的固着理論」図参照)。このように、複雑に捉えられがちな摩擦プロセスを、可能な限り単純なモデルで科学的に理解して、技術的に制御するための研究に取り組んでいます。
アドバンテージ
材料物性(汎用摩擦試験機、汎用材料試験機、粘弾性測定装置)、表面物性(表面張力計、表面硬度計、ナノインデンタ)、表面観察(光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザ顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡)、映像撮影(高速度カメラ、光弾性カメラ、近赤外カメラ、超高感度カメラ)、分光分析(超薄膜光干渉装置、ラマン分光分析装置)など、摩擦プロセスを研究するための十分な実験設備が整っています。個々の研究用にカスタマイズするために、上記の装置の治具を開発したり、複数の装置を組み合わせたり、装置そのものを開発しています。特に、自由な発想のもと、摩擦プロセスに関するマルチモーダル計測装置の開発を得意としています。
事例紹介
摩スティックスリップを解消する独自の制振手法(特許第6159509号「ミスアラ制振法」)を発明し、摩擦係数計測に内在する計測誤差の問題を解決しました。現在は、民間企業と連携して、各種機械製品の振動と異音を抑制するための応用研究を進めています。
主な所属学会
日本機械学会 / 日本トライボロジー学会 / 米国トライボロジー学会
主な論文
『Dynamic stiction without static friction: The role of friction vector rotation(K. Nakano・V. L. Popov)』「Physical Review E・102巻(記事番号063001)」2020年12月(原著論文)
『すべり摩擦に現れる振動の対策(中野 健・田所 千治・前川 覚・角 直広)』「トライボロジスト61巻(頁416-422)」2016年07月(解説記事)
『摩擦振動が生む動摩擦係数の計測誤差(角 直広・田所 千治・中野 健)』「日本機械学会論文集C編79巻(頁2635-2643)」2013年07月(原著論文)
主な特許
特許第6159509号「摩擦振動抑制方法およびそれを用いた機械装置」
主な著書
『接触と摩擦の物理学(丸善出版)』2023年01月(訳)
主な研究機器・設備
「汎用摩擦試験機」Bruker UMT TriboLab
「走査型プローブ顕微鏡」Bruker MultiMode 8
「超薄膜光干渉計組込型摩擦試験機」自作
「時空間分解ラマン分光計組込型摩擦試験機」自作