教育学部 学校教員養成課程 自然・生活系教育コース
准教授 倉田 薫子クラタ カオルコ
植物の進化・多様性形成機構の解明を研究テーマとし、そこから明らかになる知見で絶滅危惧種植物の保全システムの構築や生物多様性理解のための教育実践研究を行っている。
植物の多様性形成機構を形態や生態、分子生物学的手法を用いて明らかにしている。多様化の結果生じた地域固有種について、遺伝的多様性評価に基づいた保全策を提案している。また、生物多様性と文化多様性のつながりを意識した子ども向け環境プラグラムの開発を行っている。
研究分野 - 分野
生物学
研究分野 - 分科
基礎生物学
研究分野 - 細目名
生物多様性・分類

キーワード
植物系統地理 / 絶滅危惧植物 / 生物多様性保全 / 生物文化多様性 / 環境教育

相談に応じられるテーマ
環境教育講座や研修の実施、イベント等へのアドバイス / 植物の保全に関する調査・研究と保全システム構築

所属
教育学部 学校教員養成課程 自然・生活系教育コース
先進実践学環 リスク共生学
総合学術高等研究院

E-mail
kurata-kaoruko-tv@ynu.ac.jp
ホームページ

研究概要

植物の進化・多様化は、さまざまな環境との共進化の結果起きたものである。その要因は何だったのか、いつ、どのようにして起きたのかを、DNAを用いて明らかにしている。長い年月かけて多様化してきた植物であるが、今日、生物多様性が重視される一方で、絶滅の危機に瀕しているものも少なくない。それらの植物について、保全単位を明らかにし、残された個体から最大限の遺伝的多様性を維持できるような保全システムを構築することは必要不可欠である。企業でも生物多様性保全に配慮した経営が必要になってきた昨今、土地や資源の利用に伴う生物相への影響をできる限り少なくし、資源利用と生物多様性保全の両立を目指し、現場でハンドリングが可能な手法を提案することを目標にしている。また次世代育成も大きな課題である。いまだ低い生物多様性の理解に対して、生物多様性と文化多様性の相互作用に着目し、自然共生社会構築のための取り組みを推進している。

アドバンテージ

植物のもつ不思議に純粋に感嘆しその仕組みを解明していくことと、人間活動による環境の改変への対応を行うことの両輪で研究が成立している。また生物文化多様性に着目したプログラム開発により、自然を大切にする気持ちをはぐくむ環境教育にも資する。

事例紹介

埼玉県の武甲山では、古くから石灰岩の採掘を行ってきた。今の東京の街はこの山の石灰岩でできているといっても過言ではない。その山の固有種、チチブイワザクラは石灰岩利用のために生息地を追われ、現在生育域外保全を行っている。鉢植えでの管理するのは難しく、現場で簡便に管理することができる保全システムが望まれた。そこで近年充実してきたDNA解析の手法を用いて個体識別を行い、遺伝的多様性の評価や遺伝構造を明らかにした。これを二次元バーコードに情報を集約して一元管理し、現場で手軽にその情報へアクセスできる生育域外保全システムを構築した。本システムを利用すると、花期にどの花の花粉を人工授粉すれば健全な種子ができやすいかを瞬時に判断でき、遺伝的多様性を高める種子生産が可能になる。生育域外で健全に個体を保全しておくことで、将来的な植え戻し(野生復帰)、生態系の回復の可能性を広げることができる。SDGsが普及して以降、持続可能な開発はさらに着目されている。武甲山信仰は秩父の伝統文化であること、採掘企業によって雇用が生まれ街が発展してきたこと、遠く離れた我々もその開発に無関係ではないこと、そういったことを含む生物多様性理解のための啓発を行っていくことが、2050年ミッション「自然と共生する社会」にむけて今後の重要な研究になると考えている。

主な所属学会

日本植物学会 / 日本植物分類学会 / 種生物学会

主な論文

Genetic and reproductive characterization of distylous Primula reinii in the Hakone volcano, Japan: implication for conservation of the rare and endangered plant. Journal of Threatened Taxa, 2020
Contrasting evolutionary process during Quaternary climatic changes and historical orogenies : a case study of the Japanese endemic primroses Primula sect. Reinii. Annals of Botany, 2017
Conservation genetics od an ex situ population of Primula reinii var. rhodotricha, an endangered primrose endemic to Japan on a limestone mountain. Conservation Genetics, 2017

主な著書

「環境カウンセラーのガラパゴス見聞録」(監修)・三省堂書店/創英社・2022
「100万人のフィールドワーカーシリーズ第13巻フィールドノート古今東西」(分担)・古今書院・2016
「世界を読み解くリテラシー」(分担)・萌書房・2010

主な研究機器・設備

サーマルサイクラー、ミクロトーム

主な地域活動(国内、特に神奈川県内)

特定非営利活動法人日本ガラパゴスの会理事(日本ガラパゴスの会)
公益財団法人地球環境戦略研究機関国際生態学センター運営委員(IGES-JISE)