
企業の展開するマーケティング施策に
管理会計の知識をどう使えるのかを明らかにしている。
経営学部 経営学科
研究概要
(1)マーケティング・アカウンタビリティに関する研究
マーケティング・アカウンタビリティとは、「マーケティングROIやマーケティング効率を用いて、品質を維持し、企業価値を向上させながら、測定可能な利益を得るための、マーケティング資源とマーケティングプロセスの体系的な管理責任」(AMA 2005)等のことを指します。近年、マーケティング投資の増大から、社内外の利害関係者への説明責任を果たすことが重要であると言われています。私は、「マーケティング活動の業績評価」及び「マーケティング活動の説明責任プロセス」をテーマに研究を進めています。
(2)顧客接点管理での会計情報に関する研究
顧客接点は企業が顧客と接する場所であり、タッチポイント等と呼ばれます。マーケティング活動において、顧客接点管理は、売上獲得のみならず、企業やブランドの認知や向上につながるものとして重視されています。私は、「顧客接点の創出と維持」をテーマに研究を進めています。ここでの会計情報とは、貨幣額情報及び非貨幣額情報を指します。
アドバンテージ
(1)会計学とマーケティングとのバランスが取れた研究
マーケティング管理会計では、企業がマーケティング施策を展開する中で、管理会計の知識をどのように使えるのかを明らかにします。マーケティング管理会計をテーマとする研究者の中でも私は、マーケティング関連学会に所属して、研究者や実務家と情報交換しています。これは、現代のマーケティング活動に即したマーケティング管理会計を研究するためであり、企業実務への知識提供はもちろん企業内でのシステム実装に直結するように心がけています。
(2)さまざまな顧客接点の管理を対象とした研究
昨今の顧客接点は、オフラインとオンラインともに多様化しています。また、顧客接点管理は、BtoC(企業と消費者間取引)の取引という印象が強いですが、BtoB(企業同士の取引)の取引でも重視されています。さらに、マーケティングに関心のある中小企業が増えてきたこともあり、企業規模の大小を問わず、さまざまな企業が顧客接点の管理に取り組んでいます。私はこのように広く顧客接点をとらえて、定性研究を通じた情報蓄積をしています。
事例紹介
研究を用いた事例として、ダイレクト・レスポンス広告(以下、DR広告と表記)における費用対効果の測定枠組みを紹介します。
DR広告は、生活者からの注文及び問い合わせ等を受け付けることを目的とした広告です。私は、DR広告を掲載する企業へのインタビュー調査を通じて、収益の発生要因としてのDR広告と本製品を購入した顧客からの売上との対応関係を描写しました。
DR広告は、潜在顧客等の顧客にとって、「短期的レベニュー・ドライバー」「蓄積的レベニュー・ドライバー」のいずれかに分けられます。短期的レベニュー・ドライバーは、顧客の購買動機に与える影響が直接的で、収益発生までに要する時間が短期的な収益発生要因です。それに対して、蓄積的レベニュー・ドライバーは、購買動機に与える影響が直接的、あるいは間接的で、収益発生までに要する時間が長期的な収益発生要因です。

図中のケース1の場合、DR広告は短期的レベニュー・ドライバーと位置づけられます。ケース1では、DR広告を見てサンプル製品を請求した顧客と、その顧客が本製品を購入することで得られた売上を対応させることができます。この対応関係は、業績評価指標を用いることによって測定・管理ができるようになります。
主な所属学会
・日本会計研究学会 / ・日本原価計算研究学会 / ・日本ダイレクトマーケティング学会
主な論文
・ 君島美葵子「顧客接点としてのコールセンターに対する管理会計適用の一考察―戦略的コールセンター・マネジメントに向けたインタビュー調査―」『横浜経営研究』2016年.
・ 君島美葵子「マーケティング活動のアカウンタビリティに対する財務指標の活用」『横浜国際社会科学研究』2013年.
・ 君島美葵子「通信販売における注文獲得費の投入産出関係の測定」『横浜国際社会科学研究』2011年.
主な著書
君島美葵子「電子商取引の発展と営業費会計の変容」(中村博之・高橋賢編著『管理会計の変革― 情報ニーズの拡張による理論と実務の進展』第5章所収. 中央経済社 ISBN:9784502488801)2013年.