導入メカニズムを研究している。企業の販売活動における、
業績評価指標や業績管理システムの測定・活用の要因を分析してきた。
経営学部 経営学科
総合学術高等研究院
先進実践学環
研究概要
企業の効果的な販売活動を実現するために、財務・非財務指標、管理会計技法や管理会計システムの導入・運用に焦点を当てた研究を行っています。例えば、IT技術の進歩とともに高度化された経営管理システムから、KPI(Key Performance Indicator)や将来予測情報を入手しやすくなっていますが、これらの情報が販売活動の成果に結びつかなければ全社貢献も期待できません。近年では、販売活動でKPIを効果的に使用するために、顧客管理の一元化を目的としたマーケティングオートメーション(MA)ツールを導入する企業が増えています。しかし一方、MAツール導入への投資が難しい企業もあります。そのため、MAツールの有無という技術面から管理会計の導入・運用を検討することはこれからの研究で必要です。
また、管理会計の導入は企業に委ねられていますので、経営管理上必要と判断した管理会計技法やシステムを選択し、自発的に導入することになります。この場合、管理会計は財務会計と異なり、規定する法規制がありませんので、企業独自ルールに従って運用することになります。管理会計情報を扱うには、機密保持や客観性といった倫理的配慮が求められます。このような規範面からも管理会計の導入・運用を検討することが必要になります。
アドバンテージ
私は、企業へのインタビュー調査に基づく事例研究を主な研究方法としています。今までに、販売から販売支援(具体的にはコールセンター)まで、幅広く販売に関わる事業を対象として事例を蓄積してきました。
事例紹介
研究を用いた事例として、ダイレクト・レスポンス広告(以下、DR広告と表記)における費用対効果の測定枠組みを紹介します。
DR広告は、生活者からの注文及び問い合わせ等を受け付けることを目的とした広告です。私は、DR広告を掲載する企業へのインタビュー調査を通じて、収益の発生要因としてのDR広告と本製品を購入した顧客からの売上との対応関係を描写しました。
DR広告は、潜在顧客等の顧客にとって、「短期的レベニュー・ドライバー」「蓄積的レベニュー・ドライバー」のいずれかに分けられます。短期的レベニュー・ドライバーは、顧客の購買動機に与える影響が直接的で、収益発生までに要する時間が短期的な収益発生要因です。それに対して、蓄積的レベニュー・ドライバーは、購買動機に与える影響が直接的、あるいは間接的で、収益発生までに要する時間が長期的な収益発生要因です。
図中のケース1の場合、DR広告は短期的レベニュー・ドライバーと位置づけられます。ケース1では、DR広告を見てサンプル製品を請求した顧客と、その顧客が本製品を購入することで得られた売上を対応させることができます。この対応関係は、業績評価指標を用いることによって測定・管理ができるようになります。
主な所属学会
日本会計研究学会 / 日本原価計算研究学会 / 日本管理会計学会 / 日本ダイレクトマーケティング学会 / 中小企業会計学会 / American Accounting Association
主な論文
「アカウンタビリティの概念比較―管理会計とマーケティングの接点に着目して―」『横浜経営研究』2022.
「ファミリービジネスにおける管理会計の導入と実践―老舗中小企業の事業承継を事例として―」『産業經理』2020(共著).
「顧客接点としてのコールセンターに対する管理会計適用の一考察―戦略的コールセンター・マネジメントに向けたインタビュー調査―」『横浜経営研究』2016.
「マーケティング活動のアカウンタビリティに対する財務指標の活用」『横浜国際社会科学研究』2013.
「通信販売における注文獲得費の投入産出関係の測定」『横浜国際社会科学研究』2011.
主な著書
君島美葵子「電子商取引の発展と営業費会計の変容」(中村博之・高橋賢編著『管理会計の変革― 情報ニーズの拡張による理論と実務の進展』第5章所収. 中央経済社 ISBN:9784502488801)2013年.