例えば、新たなメカノクロミック発光を示す等の、
機能を持った有機分子の創製に取り組んでいる。
大学院理工学府 化学・生命系理工学専攻 先端化学ユニット
理工学部 化学・生命系学科 化学教育プログラム
研究概要
有機合成化学と超分子化学を基盤とし、「発光特性」や「分子認識能」等の“機能を持った有機分子”の創製に関する研究に取り組んでいます。特に、(1)圧迫や摩擦などの機械的刺激に応答して固体発光色が変化する「メカノクロミック発光」を示す有機色素、(2)分子内の二カ所の不斉点を一挙に構築する「二重不斉付加反応」を活用した新規キラルジオール・キラルジアミン類の合成とその分子認識能に関する研究を行っており、センサー材料等への応用を目指しています。
アドバンテージ
(1)一般に、溶液中で効率良く発光する蛍光色素であっても、固体状態では「濃度消光」により発光効率が大きく低下しますが、新規の分子設計に基づき、固体状態で効率良く発光する色素群を創製することに成功しています。既存のメカノクロミック発光性色素は、多くの場合、機械的刺激により変化した発光色が加熱や有機溶媒への曝露により元に戻りますが、室温下での自発的回復や超音波の照射といった、従来とは回復の仕方が異なる色素を見出しています。
(2)キラルジオール・キラルジアミン類は、不斉触媒や光学分割剤を始めとして幅広く用いられていますが、その種類は限られています。二重不斉付加反応では、簡便に新規のキラルジオール・ジアミン類を合成できます。これまでに、キラル分子の鏡像体過剰率をNMR 法により決定できるキラルジアミン誘導体を得ており、重金属を用いない方法として有用です。
事例紹介
機械的刺激を加えると固体発光色が長波長化し、室温下で自発的に元の発光色に戻る種々のメカノクロミック発光性有機色素を創製することに成功しています。圧カセンサーやセキュリティインク等への実用化に向けて連携先を探しています。
主な所属学会
日本化学会 / 有機合成化学協会 / 光化学協会
主な論文
『Concentration-dependent circularly polarized luminescence (CPL) of chiral N,N’-dipyrenyldiamines: sign-inverted CPL switching between monomer and excimer regions under retention of the monomer emission for photoluminescence』「Chem. Commun. 53, 6323-6326」2017
『Indolylbenzothiadiazoles with varying substituents on the indole ring: a systematic study on the self-recovering mechanochromic luminescence』「RSC Adv. 7, 16953-16962」2017
『Controlled Self-Assembly of Multiple Diastereomeric Macrocyclic Boronic Esters Composed of Two Chiral Units』「J. Am. Chem. Soc. 134, 13962-13965」2012
主な特許
特許第6663820号 「インドリルベンゾチアジアゾール誘導体,インドリルベンゾチアジアゾール誘導体の製造方法及び有機蛍光材料」
特許第6521728号 「インドリルベンゾチアジアゾール誘導体,インドリルベンゾチアジアゾール誘導体の製造方法及び有機蛍光材料」
特願2015-098481 「光学活性ジアミン誘導体, 光学活性ジアミン,光学活性アジド,光学活性ジオール,光学活性ジアミン誘導体の製造方法及び光学活性化合物の光学純度決定法」
主な研究機器・設備
蛍光分光光度計
示差走査熱量計
旋光計