
理工学府 化学・生命系理工学専攻 先端化学
理工学部 化学・生命系学科 化学EP
先端科学高等研究院 先進化学エネルギー研究センター
研究概要
「ゼオライト」は結晶構造に由来する、分子サイズのミクロ孔をもつことから「分子ふるい」として知られる機能性材料の一つです。ゼオライトのミクロ孔は特定の大きさの分子を選択的に生成する反応場として有効に利用することができます。触媒として優れた機能をもつゼオライトに注目して、グリーンケミストリーの理念の実現を目指して研究を進めています。
「規則性メソポーラス材料」はミクロ孔よりも大きなメソ孔を有する多孔質材料です。この材料はSi02のみならず、様々な金属酸化物や炭素で構成することができます。またメソ孔をもつことで非常に大きな比表面積をもつため、広い反応場を供することで高効率な触媒反応を実現できます。また電気二重層キャパシタの炭素電極として高い充放電容量を実現する材料です。
このように「多孔性」と「化合物がもつ本来の機能」を組み合わせることで、高度な物質変換のための触媒への応用、ならびに次世代型のエネルギー材料・エネルギー変換材料への応用に取り組んでいます。
アドバンテージ
ゼオライト合成に関わる無機化学の知見を持ち、ゼオライト触媒を利用した様々な固体触媒反応に精通しています。またガス・蒸気吸着を活用した固体表面の物性解析、固体NMRを利用した多孔性材料の構造解析を実施できます。
事例紹介
●ゼオライト触媒の活性点分布の制御
工業的に固体酸触媒として最も活用されているZSM-5ゼオライトに対して酸処理を施すことにより、粒子外表面の活性点を選択的に除去できることを見出しました。これによりZSM-5ゼオライトの形状選択性を最大限引き出すことでターゲットとなる化合物の選択率が非常に高い触媒を実現しています。
●貴金属クラスターを内包するゼオライト触媒の調製
ゼオライトのミクロ孔内に貴金属を内包する触媒の調製を実現しています。このような触媒は例えば、水素エネルギーキャリアであるメチルシクロヘキサンの高純度化のための高選択的な反応への応用が期待されています。
●電気化学的なCO2吸脱着システムの開発:規則性多孔質炭素の調製と電極としての応用
規則性メソポーラスシリカを鋳型として規則性メソポーラス炭素を得ることができます。この材料がもつ広いメソ孔空間に、アントラキノンなどの電気化学的に酸化・還元が起こる物質を内包させることで、電気化学的なCO2吸脱着システムに欠かせない電極の開発を進めています。
主な所属学会
触媒学会 / 日本吸着学会 / 炭素材料学会
主な論文
『Highly efficient titanosilicate catalyst Ti-MCM-68 prepared using liquid-phase titanium source
for the phenol oxidation』「RSC Advances, 11, 3681-3684」 2021
『Control of framework Al distribution in ZSM-5 zeolite via post-synthetic TiCl4 treatment』
「Micropor. Mesopor. Mater., 302, 110223」 2020
『Ni-catalyzed carbonization of furfuryl alcohol polymer in ordered mesoporous silica MCM-48 giving
ordered mesoporous carbon CMK-1 with high electric double-layer capacitance』
「Microporous Mesoporous Mater., 241, 123-131」 2017
主な特許
特許第5131624号 「パラフィンの接触分解法」
特許第5299917号 「炭化水素油及び潤滑油基油の製造方法」
特許第5646279号 「軽質オレフィンの製造方法」
主な著書
「ポーラスカーボン材料の合成と応用」「19章 リチウム-硫黄二次電池の高容量化のための硫黄/多孔性炭素複合電極」(上野和英准教授との共著) シーエムシー出版,2019
「ナノ空間材料ハンドブック」「第3章 ゼオライト類 第2節SDAを用いた新しいゼオライトの合成」(窪田好浩教授との共著)エヌ・ティー・エス,2016
「革新的な多孔質材料 ―空間をもつ機能性物質の創成―」「11章ゼオライト合成と応用の最新事情」(窪田好浩教授との共著) 化学同人,2011
主な研究機器・設備
高精度ガス・蒸気吸着量測定装置
赤外分光分析装置(FT-IR)
質量分析計搭載定速昇温式触媒評価装置(TPD, TPR,TPO)