
理工学部
研究概要
近年、AIや計算科学の発展によって、膨大な化学データを活用した分子設計や反応予測が可能になりつつあります。しかし、AIだけでは「なぜその分子が優れているのか」「どのような反応機構で物性が決まるのか」を十分に説明できないことも少なくありません。
私たちは、文献検索・量子化学計算・機械学習・有機合成を融合し、化学現象を理解・予測・設計する研究を行っています。
アドバンテージ
本研究室の最大の特徴は、有機合成・反応解析・量子化学計算・機械学習を一つの研究グループで一体的に進められることです。AIによる予測にとどまらず、実験による検証、電子状態解析による反応や物性の理解、さらに新たな分子設計へのフィードバックまでを一貫して行う研究サイクルを構築しています。また、化学分野では十分な学習データが得られない課題も多いため、量子化学計算、反応機構、化学文献などの専門知識をAIへ取り込むことで、小規模データでも高精度な予測を可能にする手法を開発しています。さらに、食品、医薬、材料、化学メーカーなど多様な分野との共同研究実績を有し、分子設計、機能予測、データ解析、AIモデル構築までを一貫して支援できることも大きな強みです。基礎研究で培った知見を社会課題の解決へとつなげ、新しい材料・機能性分子の創出に貢献しています。
事例紹介
その1)有機反応の立体選択性をAIで予測
医薬品や機能性材料の合成では、目的とする立体異性体を選択的に合成することが重要です。本研究では、ケトンの不斉還元反応を対象に、量子化学計算から得られる三次元電子状態と機械学習を組み合わせ、反応の立体選択性を高精度に予測しました。さらに、AIによる予測だけでなく、その選択性が生じる理由を電子状態から説明できるモデルを構築し、新しい触媒や反応条件の効率的な設計へ応用しています。
その2) 食品中の抗酸化物質をAIで探索
食品中には健康維持に役立つ抗酸化物質が数多く含まれています。本研究では、数百種類のフェノール化合物について同一条件で抗酸化活性を測定し、大規模な実験データベースを構築しました。さらに、量子化学計算と機械学習を組み合わせることで、高い抗酸化活性を示す分子の予測と、その活性を生み出す構造的な特徴を明らかにしました。食品機能性成分の探索や新しい抗酸化物質の設計への応用が期待されます。
主な所属学会
日本化学会 / 有機合成化学協会 / 高分子学会
主な論文
Using Three-Dimensional Information to Predict and Interpret the Facial Selectivities of Nucleophilic Additions to Cyclic Ketones J. Chem. Inf. Model. 2024, 64, 8, 3213–3221
Substrate Scope in Organic Reactions: Comparison of Fingerprint-Based and Reactivity-Based Similarity Metrics J. Chem. Inf. Model. 2026, 66, 7, 3878–3891
DPPH Measurements and Structure—Activity Relationship Studies on the Antioxidant Capacity of Phenols Antioxidants 2024, 13(3), 309
主な研究機器・設備
計算機
主な地域活動(国内、特に神奈川県内)
日本化学会関東支部 幹事
「化学クラブ研究発表会」コメンテーター・審査員

