「固定型多軸ステージ」の特徴を併せ持つ技術を開発した。
理工学部 機械・材料・海洋系学科 機械工学教育プログラム
大学院理工学府 機械・材料・海洋系工学専攻
研究概要
現在の実装設備は、実装精度が高くなるにつれて大型化し、場所・エネルギーの損失が大きくなります。さら
に、品種変更の際の配置換えが困難であり、変量多品種に対する柔軟性に欠けています。本研究では「平面内の併進X・Yと回転θの3自由」を、独立かつ精密に動作可能な、5cm立方サイズのXYθ小型自走機械を複数台用いて、変量多品種、省スペース、低コスト、省エネルギー、低振動の特長をもつシステムを開発しています。
アドバンテージ
ロボット技術は、大型機械の製造、食品、セキュリティ分野の多品種化・自動化に大きく貢献しています。しかし、ロボット技術は精密化と小型化が不十分であるため、μm以下の精度が必要な精密機械工業分野への応用は難しいのが現状です。
精密機械工業分野では、小ロットの電子基板、細胞の核移植、高級アナログ時計、研究段階のMEMS・マイクロマシン等、少量多品種生産の需要(ニッチ)が幅広く存在します。
それらは熟練者の手動微細作業により実施されており、少子化による人手不足が深刻化しています。つまり専用機の開発が困難、又は採算が合わない微細作業の汎用型精密機械による自動化は重要課題と言えます。
本研究では、超精密小型ロボットにより、精密作業システムの柔軟性を飛躍的に高めることを目的としています。将来的には複数台の協調作業によるロボットファクトリの構築を目指しています。これにより品種変更に伴う配置変更を、自動かつフレキシブルに実現できるようになり、少量多品種生産への適用力を大幅に拡大できると見込んでいます。
本技術は、小型軽量、nmの分解能、XYθ軸のホロノミック動作を同時に実現できるため、「高い汎用性」を特長とする「ロボット技術」と、「精密位置決め」を特長とする「固定型多軸ステージ」の特徴を併せ持つ技術と言えます。実用化の例としては、顕微鏡や加工機などの既存精密機器の狭所に、オプションとして設置追加する事で、既存機器の機能拡張などが考えられます。
事例紹介
昆虫のように小型軽量(5cm3,100g)なXYθに独立に精密動作可能な小型自走ロボットを提案し、全方向への並進動作や任意点での回転動作を実現しています。
これまでに、開ループ制御では、動作補正により経路長に対し1%の位置決め誤差を実現し、閉ループ制御では、エンコーダを複数組み合わせたXYθ変位センサにより0.1μmの分解能でのXYθ軸の精密位置決め制御を実現しました。
小型ロボットに搭載する小型作業ツールでは、液架橋力により0.5mmサイズの柔軟かつ複雑な形状をもつ微小物を操作するマニピュレータを開発しています。また液中において振動ピペット近傍に発生する局所流動を用いて、柔軟かつ複雑形状をもつ細胞・微小部品を多軸かつ精密に操作する技術を開発しています。
主な所属学会
精密工学会 / ロボット学会 / 機械学会 / IEEE
主な論文
八釼学, 渕脇大海, 独立三自由度を有する六点接地型自走式精密位置決め機構の開発, 日本機械学会論文集C編, 査読有, Vol.79, pp.956-969, No.800, 2013
K. Tanabe, O.Fuchiwaki(4th), Precise trajectory measurement of self-propelled mechanism by XYθ 3-axis displacement sensor consisting of multiple optical encoders, Proc. SICE, pp. 998-1003, 9/8, 2021
O. Fuchiwaki et al, Multi-axial non-contact in situ micromanipulation by steady streaming around two oscillating cylinders on holonomic miniature robots, MANO, 2018, IF=2.4
主な特許
特許第4660772号 米国特許7,726,210「検体動作制御装置、検体動作用のパラメータの取得方法、及び検体動作制御方法」
主な研究機器・設備
三次元モデリングマシン(Roland,MDX540、切削分解能1μm)
FPGA(NI、c-RIO)
垂直多関節ロボットアーム(EPSON、C4)