
環境情報学府 人工環境専攻
都市科学部 環境リスク共生学科
研究概要
市場の成熟に伴い、個々の商品の競争においても機能・技術面での差別化が難しくなっていることから、相対的にデザインによる差別化が重要になっています。ユーザにとってのデザインの質が向上し、企業をはじめとする関係者の利益となる状況が望まれ、そうした状況が整備されるように法制度も設計されるべきでしょう。
こうした考え方のもと、意匠法や著作権法を中心とするデザイン保護制度の研究を行っています。主な手段として、イギリス法との比較法研究を採用しています。それと同時に、デザイン創作を促し、質の向上に寄与することを目指すことから、デザイン創作のプロセスに沿った形で法的保護のありようを見渡す視点が重要であると考えています。
アドバンテージ
・デザイン保護法制について古くから試行錯誤を繰り返して、独自の体系を形成しているイギリス知的財産法の現状に関する分析をもとに、新たな視点から日本の解釈論を展開している。
・複数の知的財産法が関係するデザイン保護法制を整合的に体系化するため、創作から商品の上市、修正改良に至るまでの一連のデザインプロセス全体を見渡す視点から研究を行っている。
事例紹介
・イギリスのパッシング・オフ(コモンロー上の不法行為。不正競争法の主たる法)によるパブリシティ保護の現状分析と、ここからの示唆に基づく日本の不正競争防止法2条1項1号によるパブリシティ保護の解釈論の展開
・実用品のデザインに対する著作権保護のあり方の分析、権利制限規定の解釈(いわゆる「写り込み」)との関係
・棋譜情報配信事件控訴審判決(大阪高判令和7年1月30日)に基づく、知的財産法で保護されない情報に対する一般不法行為による保護の研究
主な所属学会
日本工業所有権法学会 / 著作権法学会 / 日本知財学会
主な論文
末宗達行「イギリスにおけるPassing offによるパブリシティ保護(一~三・完)―不正競争防止法・混同防止規定によるパブリシティ保護への示唆―」早稲田大学大学院法研論集157号115-135頁・158号173-198頁・159号247-267頁(いずれも2016年)
末宗達行「応用美術の『写り込み』をめぐる一考察(1~2・完)―イギリス法との比較を通じた著作権法30条の2の解釈の検討―」早稲田法学97巻4号1-41頁・98巻1号1-46頁(いずれも2022年)
末宗達行「イギリスにおけるデザイナーの権利をめぐる現状と日本法への示唆」日本知財学会誌21巻2号(2024年)50-60頁
主な著書
Chapter 3 Ownership of Design Rights’ in Christoph Rademacher & Tsukasa Aso (eds.) Japanese Design Law and Practice (Kluwer Law International 2020) pp. 33-45
主な地域活動(国内、特に神奈川県内)
工業所有権審議会試験委員 弁理士審査分科会試験委員(2023年03月 - 2023年11月)